妖魔04~聖域~
それに従って、車が走行している。

信号機付近まで来ると、周囲に木で出来た家屋などなく、コンクリートで出来た建物が並んでいる。

「ここまで変化があるのか」

取り付けられた看板は木製ではなく、鉄で出来ているようだ。

さらに、一本道が十字路に変化していて、車の数も増えている。

通行量の多い道だからこそ、信号機が取り付けられていると気づいた。

冬狐はどこまで歩いてくのか。

後を付いてるが、もう別行動でもいいだろう。

「で、君は何処へいくわけ?」

冬狐が急に立ち止まり、振り返る。

言おうとしていた事を先に切り出されて、少し狼狽してしまう。

「ここだ」

長老に渡された紙には目的地しか書いておらず、道筋が解らない。

「へえ、君、湊のところに行くんだ」

「秋野か」

秋野湊、俺は知っている。

何を考えているか解らない女で、気を抜けば殺されてもおかしくはない相手だ。

前回の改革派のメンバーとして選ばれて、里を出た女だ。

村では非常に優秀な女として有名だった。

「まさか、秋野が俺の上役になるわけか」

「待遇はいいと思うわよ」

「面倒くせえ相手だ」

解りにくい相手は非常にやりにくい。

冬狐は目的がハッキリとしているからいいが、秋野は改革派の目的に本当に賛同しているのかよくわからない。

本当の目的は別のところにあるのではないかと疑ってしまう。

姿を見て感じたのはそれくらいだ。

良からぬ事を考えている場合がある。

用心に越した事はない。
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