妖魔04~聖域~
どうしてだろう。

お吟さんと旅をしている内に、心中ではお吟さんと共にいるのが心地よくなってきている。

「何を一人でブツブツ言ってるアル?まさか、病気にかかったアルか?」

「俺は、誰彼構わず、やらないよ」

お吟さんと俺は、上手くやっている方だとは思う。

でも、厄介事を起こしてくれるから、ツケが俺に回ってくるんだ。

巨大鳥に襲われたのは、お吟さんが卵を食いたいと我が侭を言い出して、密かに盗んだのを発見されて逃げ回った。

山賊や海賊も、密かに宝を盗みに入って出て行く途中に見つかって、戦いつつも逃げ回った。

容赦なく襲いかかってくることもあったんだが。

逃げられたのは旅の途中で、お吟さんに稽古をつけてもらったおかげでもある。

お吟さんは長い事生きてきただけあって、色んな格闘術を知っている。

全てではないが、結構な量を体に叩き込まれた。

「本当、何もねえな」

前の街から、ニ,三日かけて歩いてきた。

旅には慣れてきたが、何もなかったというのは無駄な時間を使っている。

紅い渓谷での修行はロッククライミングくらいしかないだろう。

「お吟さん、もう帰るかあ?」

「そうアルな」

「そうだよなあ」

「いい男がいない場所に正解なんてないアル」

「はあ」
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