妖魔04~聖域~
様子を見れば、攻撃する意志があるのが解った。

巨体だけあって、振り下ろしてくる拳も大きい。

軽くバックステップすると、拳は地面を叩いている。

隙の出来たところで巨体の腕に足を置いて、逆の足で真横からあごに膝蹴りを決める。

しかし、頑丈なのか、後ろに怯まない。

フックで俺の腹部分を狙ってくる。

だが、相手の頭を持って放った二段階の膝蹴りが先に決まっている。

これには耐え切れなかったようで、後ろへ吹っ飛ぶ。

「敵なら容赦はしねえよ」

吹っ飛ぶところを追いかけて、倒れそうになったところの顔面に拳を穿つ。

そして、頭を地上へとぶつける。

それ以上の打撃を与えようとはせずに、後ろ走りで遠ざかる。

「一体何なんだよ」

巨体は気を失っていないようで起き上がってくる。

「うーん、天はニ物を与えずアルな」

「まさか、アレの大きさはそうでもないとか言うんじゃねえだろうな?」

「体の相性がばっちりなだけあって、アチシの考えもよく解ってるアルな」

「はあ」

お吟さんは相手の服の下を能力で見ることが出来る。

それ以上奥にある臓器の場所や調子なども見ることが出来るようだ。

病気などがあれば、解るようになっている。

旅の途中で知った事だ。

「まだやる気か」

再び構えようとしたが、巨体の表情は何かに怯えているようだ。

戦意があるとは思えない。

巨体が岩陰から沸いてでてきたということはないだろう。

白い上下の服装を見ても汚れてはおらず、小奇麗といっていい。

詳細不明な建物から出て来たというのか。

「おい、あそこから来たのか?」

問いかけに答えようと口を開こうとしたが、巨体の体は痙攣を起こして倒れてしまう。

「お、おい!」

様子がおかしいので近づこうとしたが、お吟さんが止めた。
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