妖魔04~聖域~
「博士、逃亡した被験体の捕縛を完了しました」

「よろしい」

建物から出て来たのか、二人の男女が倒れた大男の傍に立っていた。

二人は白衣を着用しており、一人は中学生ぐらいの男子、一人は20後半ぐらいの女性。

女性が博士と呼んだが、男子の事だろうか。

女性は巨体の足を持って建物へと引きずっていこうとする。

「ちょっと待てよ」

俺の一声で、二人ともこちらを振り返る。

俺たちの事など見えなかったような素振りだ。

「あそこで研究をしているのか?」

坊主は面倒くさそうな顔をするだけだった。

「質問に答える義務はないし、君達に接している時間がおしいのだが」

「少しの時間でいい。アンタ達は研究者なのか?」

「広目もいる事だしいいだろう。そう、捉えてくれてもいい」

広目?

何のことは解らなかったが、話を進めた。

「それは、契約妖魔の研究か?」

「ほう」

契約妖魔という単語を出したところで興味が沸いてきたのか、帰ろうとしていた体を引き止めた。

「ナンバー01、サーチを始めろ」

「はい」

女性の瞳から光が発せられると、スキャナの光のように横に進んでいく。

俺達を通り過ぎると、光は収まったみたいだ。

女性は男子に耳打ちすると、頬を吊り上げて喜びを表現する。

「いい素材だ。それで、私が契約妖魔の研究をしていると言ったらどうなのかね?」

試されているような言い方だ。

「俺も興味があってね。良ければ、契約妖魔の力を貸して欲しいんだ」

「人に物を頼む時は先に相手に何かしてやることを知らないのかね?」

出会って早々、俺達が研究者に対して出来る事といえば、体を預ける事くらいか。

「この人以外のことならいいぜ」
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