妖魔04~聖域~
俺は彼女から離れていくなど出来なかった。

「丞は素直な奴アルな。でも、テクニックには変化球をつけて欲しいところアルな」

「善処する。じゃ、行こうか」

次なる段階へ進むために、ラインの後に続いて建物に近づいていく。

大きな鉄のドアが自動で開くと、中へと誘う。

『ダレ・・・?』

屋内に入った瞬間、声が頭の中に響いたような気がした。

お吟さんやラインは気付いていない。

気のせいだったか?

建物は研究をしているからといって、薄気味悪い造りにはなっていない。

何百人も収容できるような広い造りになっており、コンクリートで出来た壁に綺麗なフローリング。

外よりも涼しいのは冷房が効いているからなのだろう。

どこから電気や水道が通ってきているのかは謎だ。

机が多数存在し、新型のパソコンが置かれている。

壁のところどころに扉が設置されており、少し上には鉄のテンプレートが打ち付けられている。

ラインだけかと思っていたが、他の人影も見える。

チラ見しただけで、やる事があるのか通り過ぎていく。

「彼らはここの従業員だ。一人では手の届かないところが出てくるのでね」

「忙しそうだな」

「くく、機材を壊されたので、修復作業に手間をかけているのだよ」

暴走気味な巨体の行方を今は知らない。

「あの男、怯えているようだったがな」

「くく、魔力の傍に置かれることを本能的に拒絶したのだろう」

放置すれば、巨体はこの荒野で命尽きていたかもしれない。

「契約すると人間にも魔力が関係してくるのか?」
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