妖魔04~聖域~
深層世界。
母さんの姿は見えず、スポットライトの当たった場所のベンチに座っている。
周囲の暗闇の中から響く、世界を満たす音色が耳に届く。
『ワタシと同じ』
『帰る場所をなくした惨めな人形』
『幸せを求めてる』
『掴めるの?』
『鎖に繋がれたままで出来るというの?』
連続で聞こえてくる女性の声は、哀しみに満ち溢れていた。
「何もしなければ鎖を引き千切ることなんか出来ない」
俺は顔を上げて答える
『諦める?』
「いや、引き千切る牙は最初からある。怯えているから気付かないだけだ」
彼女と会話は出来るようだ。
「世界に孤独は存在する。でも、人は絶対に一人とは限らない。居場所がないわけでもない。誰かが傍にいるのなら、居場所はすでにあるんだ」
『因果の法則を破った王子様、ワタシは星の輝きを得た牙に期待してる』
彼女はどこかで待っている。
『眠っている。誰も気付かぬ箱庭の中で』
「どこだ?どこにいる?」
『雪のように白く、冷たく、誰も触れられない檻の中で』
「待ってろ。すぐ噛み砕いてやるさ」
牙があるのならば、彼女を助ける事は可能だ。
『ワタシは祈っている』
『あなたがワタシの星である事を』
美しき音色にノイズが広がっていく。
視界もノイズが埋め尽くし、テレビの電源を消したように静寂へと堕ちていく。
母さんの姿は見えず、スポットライトの当たった場所のベンチに座っている。
周囲の暗闇の中から響く、世界を満たす音色が耳に届く。
『ワタシと同じ』
『帰る場所をなくした惨めな人形』
『幸せを求めてる』
『掴めるの?』
『鎖に繋がれたままで出来るというの?』
連続で聞こえてくる女性の声は、哀しみに満ち溢れていた。
「何もしなければ鎖を引き千切ることなんか出来ない」
俺は顔を上げて答える
『諦める?』
「いや、引き千切る牙は最初からある。怯えているから気付かないだけだ」
彼女と会話は出来るようだ。
「世界に孤独は存在する。でも、人は絶対に一人とは限らない。居場所がないわけでもない。誰かが傍にいるのなら、居場所はすでにあるんだ」
『因果の法則を破った王子様、ワタシは星の輝きを得た牙に期待してる』
彼女はどこかで待っている。
『眠っている。誰も気付かぬ箱庭の中で』
「どこだ?どこにいる?」
『雪のように白く、冷たく、誰も触れられない檻の中で』
「待ってろ。すぐ噛み砕いてやるさ」
牙があるのならば、彼女を助ける事は可能だ。
『ワタシは祈っている』
『あなたがワタシの星である事を』
美しき音色にノイズが広がっていく。
視界もノイズが埋め尽くし、テレビの電源を消したように静寂へと堕ちていく。