妖魔04~聖域~
「君は声を聞いたのか」

暗闇の中に小さな影が一つ、不気味に存在していた。

「だから、いきなり現れるな」

人の心臓の寿命を縮める事をするのが楽しみなのか?

そういえば、お吟さんは人間でも妖魔でもないと言っていたな。

もしかすると、悪魔とか幽霊とか、更に信じがたい存在だったりしてな。

「契約を果たしていないのにも関わらず彼女との意識の疎通を行うとは、よほど相性がいいらしい。半人半妖とは不思議なものだ。いや、君だからなのかもしれない」

「何で俺がやり取りしたなんてことがわかる?」

「君の思考を読めるとしたらどうする?」

「エスパーかよ」

たまに人に心の内を読まれる事があるのだが、顔に出やすいとしか思えないな。

「冗談だ。冷静な判断をすれば起きてすぐに動くことはしない。よほどの好奇心旺盛な愚かな人物でなければね」

俺に対して、ラインの印象は悪いのだろう。

「君の台詞と顔色を見れば、目的のない人物とは思えなかったのだよ。共にいた広目を迎えに行くにしては顔つきが険しい。待てば連れて行くつもりであった。しかし、君は施設に何があるかも解らないのにも関わらず、痛む頭を持ちながら歩き回るはずはないだろう。チューナーとなった君が意識のやり取りをして探し物の声を聞いたとしか思えないのだよ」

やはり、ラインは声の持ち主の事を知っていた。

「一言でそこまで推理したのかよ。でも、この施設にいる契約妖魔を探しに行くってだけかもしれなかったらどうするんだ?」

「なら、もう少し期待を込めた顔をする。求めていた強さを手中に収めることが出来るのだからね。だが、君は何かに挑もうと決意を決めた硬い顔をしている」

「嫌な奴だぜ」

「君を追い詰めるために来たのではない。協力してあげようとしているのだ」

随分と優しいが、親切にするだけではないはずだ。

俺が声の持ち主に近づくことで、何かが起きるという事を期待している。

凶でも吉でも結果が出れば良いということだ。

半人半妖という初めてチューニングに取り組んだモルモットが普通のチューナー以外の出来事を起こし、データを取りたいのだろう。
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