妖魔04~聖域~
「お前を解き放つぜ」

鉄の棒をガラスに叩きつけると耳を揺るがす音を立てて割れ、破片を四散させる。

液体は外へと流れ出し、コアが地面へと落ちる。

ラインが言っていた言葉を思い出す。

契約妖魔のコアを拾った瞬間、俺の中に入る。

もし、チューナーと契約妖魔との体と心の相性が悪ければ暴走する。

それでも、体のない彼女を外に連れて行ってやりたかった。

躊躇う事をせず、拾い上げる。

普通のコアと同じように、掌の中にめり込むように入り込む。

痛みや苦しみは感じられず、あるのはどこかへと伝っていく感触だけ。

感触がなくなり、どこかで留まったようである。

何か変化があるのだろうか。

突如、視界が揺らめきだす。

「く」

気分が悪くなり膝をついてしまう。

体の相性が悪かったのか、精神の相性が悪かったのか。

『痛い?苦しい?』

姿の見えぬ彼女の気遣う声が直接、頭に聞こえてくる。

「お前が、楽しい日を送れるのなら、俺が何とかする」

震える足を殴って気合を入れ、立ち上がる。

「ハゲだけど、王子様っていうなら格好よくないと」

『王子様がワタシを満たす』

「行くぜ」

気分が悪いまま、監獄を後にする。
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