妖魔04~聖域~
「お前が瓶底眼鏡を貰った理由はどうでもいい、俺一人でやる。付いてくるな」

「そう言うな。私はお前が好きだぞ」

俺の後をカモの子供のように小走りで付いてくる。

「一人でやるから意味がある」

「二人でやるのも意味があるぞ。それに、寂しさはないぞ」

燕は引き下がらない。

どうして、俺に近づこうとする。

燕の気持ちに答えるつもりはない。

「お前、どうしても邪魔するのか?」

「違うぞ。コンビネーションの練習だ」

「お前とコンビを組む気はない」

他人が優秀であると決めているとはいえ、足を引っ張られるのが目に見えている。

「私はある。私の夢といってもいいぞ」

「お前は保守派だろう。一緒に行動するのはおかしい話だ」

「気にするな。境界線は私にない」

何を言っている。

二つの組織の存在意義が全く違う。

「じゃあ、お前は保守派でもなんでもない。代表者を止めろ」

「私はお前と共にある。だが、断る」

「面倒くせえ野郎だな」

燕とやり取りはしないほうがスムーズに進む。

長老の家から二分程度歩けば広場がある。

花壇、ベンチ、噴水など里には似つかわしくない物ばかりだ。

製作者の趣味としかいえないだろう。

広場で瓶底眼鏡をつければ、何かが起こる。

玩具のような眼鏡をつけると、噴水付近に裸眼では見えなかった物が見える。

重量感を感じる黒鉄の扉が密やかに立っている。
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