妖魔04~聖域~
「感じられるか?」

『王子様の肌、耳、目から生命を宿した世界を感じる』

「久々だからな、存分に感じればいい」

今度は、日本の土地を見せたい。

「名前、なんていうんだ?」

『ナンバー00』

「親から貰った名前があるだろ?」

『灯火は幻の中』

「記憶、ないのか?」

『風の記憶も、大地の記憶も、星の記憶も、断片的』

「そうか」

『何も鳴かない真夜中にいる』

手術の時にでも記憶を失ってしまったのだろうか。

記憶なき彼女を戦場に駆り出す事となるのか。

「じゃあ、今日から」

「ロベリア」

「何でお吟さんが答えるんだよ」

「蒼い空の下で開放するのもいいアル」

背後からお吟さんが研究所の中から出てきていた。

風に靡く髪には潤いが帯びていて綺麗に見える。

『高鳴る鼓動、輝くお星様』

「それが俺の本心なんだ」

お吟さんの事が好きだから、傍にいれば安心する。

「遠慮する事はないアル。妖艶路線でデビューするアル」

お吟さんが平然として話してるので、少し気になったことがある。

「ちょっと待て。お吟さん、こいつの声が聞こえるのか?」
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