妖魔04~聖域~

偽りの仮面

昔、昔、双子の姉妹がいました。

姉は昔から自分を迎えに来る王子様を夢見ながら成長していきました。

姉に度を越した愛情を内包していた妹も同時に成長していきます。

家族四人はとある村で暮らしており、不自由のない生活を送っていました。

しかし、母親が浮気して新しい男を作り家を出て行き、父親は病に倒れてしまいます。

しかし、姉妹は成人となっていました。

村一番と言えるほど綺麗に育った姉妹。

そこから親のない生活が始まります。

細々と暮らしていましたが親が溜めてきた賃金はなくなり、姉妹は困り果てました。

姉は考えました。

このままでは死んでしまう、働かなければならない。

しかし、男が主になって働いていた時代、女が普通に働ける場所はあった事にはあったのですが、姉は極端なドジな女の子だったのです。

一通り当たってみたのですが、砕けてしまいました。

寄る辺なき世界に放り出された姉はどうすればいいかわかりません。

その時、ある男が困った姉に近づいてきます。

「美しき人よ。何かお困りなのでしょうか?」

誰から見ても胡散臭さが漂う男でした。

「仕事が見つかりません、どうしたらいいのか困っていました」

「このご時世、女性だけで生き抜くのは難しい。しかし、あなたにも出来る仕事があります」

「でも、私、ドジですから、きっと失敗してしまうでしょう」

打ち砕かれ続けた心。

目元には暗さしか残っていません。

「心配ご無用。簡単なお仕事です」

「本当ですか?」

「相手のためと思えば、辛くともなんともありません」

「なら、やってみようかしら」

姉は男性の事を王子様と認識しており、疑いはしませんでした。
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