妖魔04~聖域~
娼婦というだけで罰せられる時代だったのです。

役所の人間に見つかれば、鞭打ちなどが待っているのです。

今の時代はそうではありませんが、いつの時代も同じというわけではありませんでした。

姉は誰よりも口が堅く、自分から一切口外しません。

客も姉の魅力を手放すのは惜しかったので、言う事はありませんでした。

しかし、有名になっていくにつれ、誰も話さずとも目撃者も現れるのです。

その噂が妹の耳に届いたことを姉は知りませんでした。

家に帰ると、妹の様子がおかしいのです。

どこか疲れているような、憂鬱げな表情を見せているのです。

姉は少し心配になりながら、妹に尋ねても答えてはくれませんでした。

彼女達の間で少しだけ溝が生じてしまったのかもしれません。

それでも姉は語るわけには行きません。

例え、それが自分と似た容姿を持つ姉妹であっても。

隠し事もいつかは妹にばれる時がきてしまいます。

ある日のこと、妹が道を歩いている日のことでした。

見知らぬ男が妹に気安く声をかけてきます。

「今夜も楽しみにしてるからね」

妹の肩に手を置こうとしましたが、その手を跳ね除け男を睨み付けました。

「寝言は寝てから言えば?」

「何だ?せっかく、指名してやろうとしたのによ!」

男はブツブツ言いながらも、どこかへと去っていきました。

彼が気安く声をかけてきたのは姉と似ている容姿を見て、間違えたのでしょう。

そして、指名という台詞によって姉が何をやっているのか粗方解りました。

しかし、確証がない以上は、ただ言っても無駄ではないかと頭を働かせます。
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