妖魔04~聖域~
「あなたの気持ちも解ってあげたい。でも、譲れないの。これが私の生きる道筋なの」

姉は、自分の生き甲斐を奪われたくありませんでした。

「姉さんにとって私の気持ちはどうでもいいんだ!」

曲げない気持ちを持つ姉の前から、妹は逃げ出します。

誰もいない村を走る小さな体躯。

夜の静寂を切り裂く駆ける足音。

行き着く先には何もない、妹にとってはどこも闇の中です。

そして、村はずれにこようとしたところで、人にぶつかります。

「君と私は運命という輪の中にいるようだ」

目の前にいるのは、彼女よりも小さな体躯の少年。

男達といざこざを起こしたのにも関わらず、少年の体には傷一つありませんでした。

妹は見知った人物がいることで、泣き崩れてしまいました。

「人生とはほろ苦いワインのようだ」

妹を連れて、村へと戻ります。

暗闇の中で二人、椅子に座り話を始めました。

「私は君のことをよくは知らない。だが、君が行動を起こしたことで、自身が傷ついたという事は様子を見て伺える」

「姉さんが、売女になっていたなんて考えられない事だった」

「真実の扉が自分にとって有益な情報を与えるとは限らない、それはわかったかね?」

「知りたかった。姉さんの知らない部分を全て知りたかったの」

滝の如く、涙がこぼれていきます。

「君は自分が女性だということに悔いているかね?」

「え?」

「尋常ではない相手を求める行動、本来ならば異性に抱く感情」

白衣の少年は立ち上がり、妹を見下ろします。
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