妖魔04~聖域~
「許されざる感情、そう、女性に、家族に特別な愛情を抱いている。それは姉妹の愛ではない」

「私は姉さんのことが好き」

「君は以前から気付いている。そして、自分が男だったらという感情も同じくあった」

少年は、妹の心が手に取るように解っていました。

妹が不思議に思うほど、余裕はありません。

「女であることは捨てられない、どうすればいいの?どうにもならないの?」

「私から言えるのは、姉を愛するという行動が極小だということだ」

「私の中には苦しいくらいのものがあるの!私は姉さんに見てもらいたいの!」

「エゴをぶつけるだけが愛というのかね?笑わせるね」

「何も知らないで!」

「それは最初に言ったよ」

更に、少年は妹を追い詰めます。

「相手を押し倒して気持ちを受け入れてもらおうなどというのは単なる子供の我侭だ。君達姉妹の間には、君の考えているような都合のいい世界はない」

「そんなことない!きっと伝えれば、姉さんなら」

「君の姉も一人の人間だ。君の考えばかりが通るとは限らない」

妹の頭の中は困惑と疲労の色で埋め尽くされています。

「君は親切な人間だと思っているようだがそれは違う。私は探求者であって、相手の心を治療するカウンセラーではない」

妹が気づいた時には、少年の顔が目の前にあります。

「君は矮小な人間、それは心も同じだ」

少年の言葉の一つ一つが、彼女の心を打ち砕いていきます。

「だが、これだけは知っておくがいい。君の望んでいる形でないにしろ姉から数多の恩恵を受けている」

少年は妹の顔から遠ざかると、闇に消えていきました。

妹は少年を追いかけることはせず、押しつぶされた自分の世界を見つめなおすしか出来ませんでした。

しばらくすると、息を切らした姉が走ってきます。
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