◇◆あじさい◆◇
私は泣き止む事ができぬまま、元来た道を戻った。

いっそこのまま、どこか遠くへ消えてしまいたいくらいだった。



家の前を素通りし、向かった先は、とっつぁんの家。


ピンポンを鳴らす事も、玄関を開ける事もできずに、私は家の前に立ち尽くした。



誰かがドアを開けるのを待つかの様に…。



〜ガチャッ〜



『風花っ!
何してんのぉ〜!こんなトコでぇ〜!』



顔を上げると、とっつぁんママが目を丸くした。



『…あんたぁ。…その目…。』



私の目は、昨日から泣きっぱなしで腫れ上がり、それを見た とっつぁんママは私を強く抱きしめてくれた。




『…聞いたよぉ。
お母さん…。倒れちゃったんだってぇ?

辛いねっ。』



とっつぁんママの腕の中は、昔、母に抱かれた時の様に温かく、とてもいい匂いがした…。



『女はねっ、人前で泣くもんじゃないっ。…でもね、どうしても泣きたくなったら、いつでもおいで…。アンタみたいな泣き虫はアタシがこうしてあげるから。』
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