◇◆あじさい◆◇
美術室では、皆が好きな様に席に着き、スケッチブックはただの落書き帳。

今日のお台は、【手】。

皆、適当に書き終えると2限ある残りの授業時間を好きな様に過ごしていた。



私は沙織の絵を見ながら問い掛けた。


『ねぇ、それって…、
もしかしてだけど、和也の手?』


沙織の描いた手は、大きくて綺麗な指先をしていた。

『やぁ〜だぁ〜!風花っ。もぉ!見ないでっ!』


沙織の真っ赤に染まる顔…。可愛くて、可愛くて。沙織の真っ直ぐな想いが羨ましかった。



『風花は?誰の手?』


私のスケッチブックは、まだ白紙だった。


『なぁ〜にぃ〜!
真っ白じゃん!?なんならモデルしましょうか?』


沙織は両手を突き出しウインクをした。


『お願いっ!って言いたいトコだけどぉ〜。沙織まだ描いてる途中じゃん!仕上げちゃいなよ。』


『そう?
ねぇ、風花ぁ?こうゆ〜のどう?』


『ん?』


『裕介の手と、とっつぁんの手、どっちが上手く描けるか試してみたらいいじゃん!?』


『えっ…?
だって、二人の手なんて、アタシ…、まともに見た事ないし。分かんないよ。』

『ん〜、そっかぁ…。
じゃあ、アタシが描き終わるまで待って。もうちょっとだから。』



『ぅん。そうする。』
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