◇◆あじさい◆◇
『…風花ぁ。
たった3人の家族だぁ…。父さん、お前には、きちんと隠さずに言おうと思う。』


父は何かを決意した。



『…うん。』


私も、何かを覚悟した…。



『…母さん。
末期の癌だそうだ…。

先生に、もって半月だと言われた…。』



父の言葉に
私は声を失った…。



『さっき、母さんにも、
それを伝えようとしたんだが…、どうしても言い出せなかった…。

でもなぁ、風花…。母さんきっと、それを分かってたんだと思うなぁ…。』



『…えっ?』



『…風花に渡して欲しいと言われたよ。』



父が私に差し出したのは、小さく畳まれた、花柄の可愛い弁当包みだった…。




私はそれを見て、もう二度と母のお弁当を食べれないんだと悟った。



涙が溢れた…。
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