【短編】プロポーズはバスタブで。
*疑惑
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「最近、彼の様子がおかしいの」
「・・・・え、孝明さんの?」
「うん。妙にコソコソしてるっていうか、隠し事をしてるっぽいっていうか、とにかくおかしいの」
そう親友の沙織に相談を持ちかけたのは、翌週、約2ヶ月ぶりのデートを控えた週の金曜日。
こじゃれたバーカウンターの片隅に並んで座り、カクテルに一つ、口をつけたあとだった。
彼とあたしの共通の友人、そして会社の同期でもある沙織くらいにしかこういう相談はできなくて。
あたしは、もう一口カクテルを口に含むとため息をついた。
「ねぇソレ・・・・つき合って5年目にして、初の浮気だったりして」
その沙織はといえば、カクテルのグラスをゆらゆら揺らしながらそんなことを言う。
あたしはそれにも一つため息をこぼし、頬杖をつく。
「バカ言わないでよ。あんないい人が浮気なんてすると思う?」
「人は見かけによらないのよ? 可能性はあると思うな」
「そんな・・・・」
「とにかく来週、確かめたら?」
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