【短編】プロポーズはバスタブで。
朝早くに出発しても道がかなり悪くて、そのときの旅行ではホテルに着いたのは日が暮れてから。
帰りも同じく苦戦。
“また行きたいね”って話はしていたけど、お泊まりデートに使えるようなホテルじゃない。
遠すぎるんだ。
「・・・・なんでいきなりあそこのホテル? いつも通りでいいじゃない、映画観たりペットショップを覗いたり、それでいいよ」
『そんなのつまんないだろ? たまには行こうよ、ヒカリも気に入ってたじゃん。な?』
けれど、いつも通りを望むあたしに反して孝明はそう言う。
こういうところが最近変なの。
前はデートの行き先は2人で決めていて、その時間が楽しかった。・・・・それなのに、今は相談すらしてくれないなんて。
「ねぇ、それって、必ず次のデートで行かなきゃならない?」
『え?』
「孝明も大変じゃん。あたしを迎えに来たその足で遠出なんて」
『あ、いや、遠出は構わないけど・・・・そうだなぁ、最悪、次の次でもいいかな』
「じゃあ、週末はいつも通りにしよ? 観たい映画があるんだ」
『そっか』