【短編】プロポーズはバスタブで。
あたしの不安に思う気持ちやモヤモヤした気持ちを悟られたくなくて、強引に話を“いつも通りのデート”に持っていった。
観たい映画がある、なんて嘘。
週末までに観てもいいかなって思う映画、探さなきや。
「・・・・ところでさ、どうしてあのホテルに泊まろうと思ったの?」
これ、聞いてもいいよね?
ただの気まぐれなら問題ない。
でも、何か意図があるなら、早めに知っておいたほうがいいような気がしてならない。
最近様子が変だし、さ。
でも、孝明の口からは。
『ふふん、秘密』
「・・・・そう」
『知りたいんだったら、ホテルに行き先変えてもいいけど?』
教える気はない、か。
含み笑いなんかして勝手に楽しそうで、こういうときの孝明にはどんなに頼んでもムダなんだよね。
秘密主義でもないくせに。
「いいよ。あたし、ここ最近けっこう残業が多くて。実は遠出できるほど体力ないの」
『そっかぁ。じゃあ、無理させるのも悪いな。分かった、映画観て食事して、いつものホテル行こ』
「うん」