【短編】プロポーズはバスタブで。
*募る不安
「だからさぁ、目の下にクマができるくらいならちゃっちゃと聞いちゃえばいいでしょ? モタモタしないで。煩わしいから」
なんてヒドいことを!!
その週は本当に寝つきが悪くて、半ばを過ぎた木曜日の昼休み。
社員食堂でご飯を食べながらコックリコックリしていたら、目の前に座っている沙織が見兼ねて頭をベシッと叩いてきた。
「なによ、ヒカリらしくもない。大した話じゃないんじゃないの? いい加減シャキッとせい!」
「そんな!この前と言ってること正反対じゃん!誰よ、孝明が浮気してるだなんて言ったのは!」
乱暴に起こされて、しかも寝起きに聞かされたのはそんなこと。
機嫌の悪さMAXだ。
けれど、あたしの機嫌がどんなに悪くても動じないのが沙織。
「じゃあ、ヒントね。ぼーっとする頭でよく考えてみて」
そう言うと制服のポケットから手帳とペンを取り出し、ページをちぎってそこに文字を書き始めた。
さらさら、さらさら。
まぁ、よく動く手だこと。
・・・・あれ。でも感心している場合じゃなくないか? あたし。