【短編】プロポーズはバスタブで。
*甘い囁き
───夜。
「ちょっと早いけど、もうホテルに入ろう。なんだかヒカリ、今日はホントに疲れてるっぽい」
お泊まりデートのときにいつも使うホテルの駐車場に車を停めた孝明は、そう言ってあたしの頭をクシャッと撫でた。
映画を観て、ペットショップをのぞいて、食事をして・・・・望んだ通りのデートになったはずなのに、あたしはどこかうわの空で。
そんなあたしを気遣って、孝明は早めに休もうと言ってくれた。
「ごめんね・・・・。どうしちゃったんだろ、疲れ溜まってんのかな」
「いいよ、そんなの。ベッドも風呂も広いし、ゆっくり休みな」
「うん」
再びあたしの頭をクシャッと撫でると、孝明は後部座席から荷物を取り出しはじめた。
あたしたちがいつも使うホテルというのは、いわゆるラブホテル。
最初は抵抗があったけど、いざ入ってみると中は清潔で落ち着いていて、普通のホテルと一緒。
妖しい照明や回転ベッドなんかを想像していたあたしは、それとはかけ離れたここのホテルがすっかり気に入って、今では常連。
入るのはココって決めている。