【短編】プロポーズはバスタブで。
・・・・そんな最低な思考ばかりが頭の中をぐるぐる駆け回って、横になっても少しも休まらない。
孝明はといえば、いつもと少しも変わらない様子でソファーでくつろいでいたりして。
時々バスルームに行っては、お湯のたまり具合を確かめていた。
「・・・・ヒカリ、ヒカリ」
寝たフリをすること何分だろう。
トントンと優しく肩を叩かれて、あたしは目を開けた。
「お湯、もういいみたいだよ」
そう言った孝明は見ているこっちが泣きたくなるほど優しい表情をしていて、切なそうでもあった。
その表情に、朝から痛みっぱなしだったあたしの胸は前にも増して強く激しく痛みだす。
フラれることばかり考えていたけど、別れを切り出す孝明も相当の覚悟と勇気が要るよね、って。
そう思うと、ズキズキズキズキ。
だったら───・・。
「じゃあ、お言葉に甘えて入ってくるね。・・・・覗かないでよ?」
「バーカ!」
「へへ」
いたずらっぽく笑って、あたしは着替えとタオルを持ってバスルームに行き、裸になった。