【短編】プロポーズはバスタブで。
───チン!
エレベーターが7階を知らせた。
そこから一番近い部屋があたしの部屋で、2年前までその隣に住んでいたのは彼の孝明だった。
その部屋は今ではホストのなんちゃらさんが住んでいて、たまにエレベーターに乗り合わせると、そのたびにしつこく誘ってくる。
「ねぇねぇ、おねーさん♪ 今日から店に新人が入ったんだー、安くするから遊びに来て♪」
「あ、おねーさんじゃん♪ 俺の源氏名、そろそろ覚えてくれた? サクヤっていうんだけどー」
などなど。
あたしがお金を持っていそうに見えるのか、それとも、ただ単にお客がほしいだけなのか。
まぁ、どっちもなんだろうけど、しつこいったらありゃしない。
あたしはホストになんか一切興味はございません!っての。
・・・・あ。つい、流れでいらないことを思い出してしまった。
あのホストの名前、サクヤだ。
「いいのかー、孝明ー!あたし、サクヤと浮気しちゃうぞー!」
帰るまでに酔いが相当回ったみたいで、部屋にたどり着くまでにらしくないことを言ってしまう。