【短編】プロポーズはバスタブで。
夜。
広々としたベッドの上で孝明に腕枕をしてもらいながら、あのときのことを振り返る。
「勘違いって恐ろしいね〜」
「ホントだよ。危うく俺、とんでもない悪党になるとこだったよ。プロポーズ計画が、どうして別れ話になったんだか」
「テヘッ」
あの頃、孝明の様子がおかしかったのは、婚約指輪を選んだり、プロポーズの言葉やシチュエーションを考えていたからだったそう。
驚かせてやりたいと内緒で計画をしていて、それを勘違いしたあたしが沙織に相談して。
沙織は、最初こそ孝明の計画を知らなかったために“浮気疑惑”を持ち出したらしいのだけど。
「沙織もアレでけっこう面倒くさがりだからなぁ。ヒカリがあんまりしつこく聞くから、途中でバラしたくなったらしいぞ」
「うん。聞いたよ、それ。ホント薄情な子だよね〜、励ますとかないのかな、沙織の頭の中には」
「いやいや、ヒカリが悪いだろ」
「そぉ?」
「そうだろ。沙織のメッセージ、見逃したのはどこの誰だ?」
「あ。あたしだ」
「だろ?」
そう───・・。