【短編】プロポーズはバスタブで。
 
次のデートでフラれるんだと完全に誤解した、ブサイクな似顔絵が書かれたヒントの紙。

あれには実は、沙織からのメッセージが隠されていたんだ。


【孝明さんはヒカリを愛してる。いつまで疑ってるつもり? そんなんじゃ孝明さん、ヒカリから離れてっちゃうんだから!】


クシャッと丸めたその紙を、プロポーズをしてもらったあとで制服のポケットから見つけて。

開くと、そう書かれてあった。

“じゃあこの絵や吹き出しの台詞は何なの?”と問い詰めたら、沙織はやっぱり、あくまで他人事というように言ったんだ。


「あー、これ? フェイクよ、フェイク。ヒカリがあんまりアホなことで悩んでるから、ちょっと意地悪したくなっちゃった」


テヘッと舌を出して笑って。

それから、こうも言った。


「プロポーズされたんでしょ? よかったじゃん、おめでとう。ヒント料は弾んでもらうからね」


あたしばっかり空回りして、疑ったり不安を募らせたり・・・・。

孝明には口止めされ、あたしには教えてとせがまれ、沙織も相当複雑だったんじゃないかな。
 

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