【短編】プロポーズはバスタブで。
あたしのモットーは“堅実”だというのに、酔った勢いでホストと浮気とか・・・・マジありえない。
普通に歩けば10歩にも満たない部屋までの距離が、今日はフラフラな足のせいで遠かった。
その足がおまけに余計な思考まで持ってきたとあっちゃ、これはもうスコーンと寝るしかない。
「んなわけないよ〜だ!」
なんて言いながら、なんとか部屋まで着いて鍵を穴にねじ込む。
目指すはベッドだ。
ろくに相談に乗ってくれなかった沙織が言った“孝明の浮気疑惑”なんていうのは、一晩寝て忘れてしまうのが一番いい。
そして“あたしも浮気を”だなんていう暴走しかけた思考を止めるのもやっぱりそれが一番。
「あたしたちは遠距離でもラブラブだもーん!沙織のバーカ!!」
そう言ってベットに倒れこむと、着替えもお風呂もすっ飛ばして文字通りスコーンと眠った。
5年つきあっても、つき合いはじめた頃と少しも変らずあたしを大切に想ってくれる孝明。
そんな孝明が、最近ちょっと様子がおかしいからって浮気なんて。
疑うだけムダなんだ。