【短編】プロポーズはバスタブで。
───けれど、翌朝。
二日酔いの頭痛とともに目を覚ますと、なぜか枕が濡れていた。
すごいヨダレだったのかな、と口元を触ってみるも、そこには乾いた感触しかなくて。
「え・・・・寝ながら泣いた?」
そんなバカなことが!と近くにあった鏡に手を伸ばし、慌てて中を覗き込んでみる。
すると、その“まさか”・・・・。
あたしの両頬には涙の線が2本、くっきりとあとが残っていた。
「・・・・そんなぁ」
鏡に映った情けない顔の自分に、思っていた以上に“浮気疑惑”を気にしていたことを知る。
“疑うだけムダ”なんて思っておきながら実はしっかり気にしていたんじゃないの、あたし!!
はぁ、なんて情けない。
そもそも、孝明とあたしの出会いはメルヘンチックなものだった。
そんなメルヘンの国に“浮気”なんて言葉は存在しないの!
まぁ、27歳にもなってメルヘンの国とか言う女子もどうかと思うけど・・・・でも、本当にそうなの!
だからあたし自身、孝明に対して少しでも疑う気持ちを持っていたことが衝撃だった。