【短編】プロポーズはバスタブで。
「・・・・んー、あれ、また寝た?」
ふと気づくと、カーテンを透けてオレンジの光が差し込んでいた。
一瞬、朝なのかと思ったけど、握りしめたままだった携帯で時刻を確かめると【16:00】。
あのあとまた寝てしまって、今に至る・・・・ということになる。
「もー!沙織が変なこと言うからせっかくの土曜日を棒に振っちゃったじゃんよぉ〜!!」
ベッドの上で小暴れする。
けれど、暴れたところで時間が戻るわけでもないし、あたしが時間を飛び越えられるわけでもない。
それに顔の腫れぼったさ・・・・。
今度は泣いてこそいなかったけど特にまぶたの辺りがひどくて、加えて頭も体もだるかった。
こんなんじゃ土曜日を棒に振らなくても出かけられない、か。
「とりあえず、お風呂入ろ」
そう言って、まぶたの腫れぼったさと気だるい体をシャキッとさせるため、冷たいシャワーを浴びにバスルームへ向かう。
脱衣場の大きな鏡に映るあたしの裸は、しばらく孝明に触れてもらっていないせいか寂しそうで。
心なしか、重力に負けていた。