PRINCESS story
泣いているのを誰にも見られたくなくて、私は必死で走った。
それなのに、あと少しで部屋に着く、という時だった。
「琴葉?」
私の名前を呼んだのは、今、一番会いたくない人だった。
「琴葉、さっきはごめ……」
私が泣いていることに気付いたのか、心配そうに奏斗が言った。
「ごめん。ほんと、傷つけるつもりなんてなかったんだ。
さっきの俺、どうかしてた」
「違う……」
違うよ、奏斗。
私が泣いてる理由は、それだけじゃない。
「違う…」
「えっ?」
「違う。違うの。私は、謝ってほしいんじゃないの!」