PRINCESS story

約束


結局、俺はあの後、琴葉に何も言わなかった。


次の日の朝、琴葉は何もなかったかのように明るく振る舞っていた。


俺は……その優しさに甘えたんだ。

最低だと分かっていても、どうすることが一番良い方法かなんて、分からなかった。



俺があの日、琴葉に当たってしまったのには理由があった。

ただの言い訳にしか過ぎないように聞こえるかもしれないが、あの日、俺は沙穂の余命を聞かされた。


『あの子、あと1ヶ月もつかどうか…』


疲れ切った顔で沙穂の母親はこう言った。


耳を疑った。

でも、日に日に弱っていく沙穂の姿が、それが本当であることを示していた。



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