PRINCESS story

「奏斗……」


私はそっと奏斗を抱きしめた。


「沙穂さんじゃなくて……ごめんね…」

沙穂さんになれなくてごめんね…


奏斗……泣かないで……



私は、奏斗の涙を初めて見た。


思いをぶつけてくれたのは、嬉しい。

でも、辛すぎる…


奏斗の中で沙穂さんの存在は大きくて、今の私には沙穂さんを超えることはできないから。



私は奏斗を抱きしめながら、必死で自分の涙が溢れそうなのを堪えた。



< 176 / 399 >

この作品をシェア

pagetop