PRINCESS story
「奏斗……」
私はそっと奏斗を抱きしめた。
「沙穂さんじゃなくて……ごめんね…」
沙穂さんになれなくてごめんね…
奏斗……泣かないで……
私は、奏斗の涙を初めて見た。
思いをぶつけてくれたのは、嬉しい。
でも、辛すぎる…
奏斗の中で沙穂さんの存在は大きくて、今の私には沙穂さんを超えることはできないから。
私は奏斗を抱きしめながら、必死で自分の涙が溢れそうなのを堪えた。