PRINCESS story
宮崎さんの説明を聞きながら、私たちはゆっくりと展示品を見て回った。
撮影を許可された取材陣しか居ない館内は、マスコミをあまり気にすることなく素直に楽しめた。
「琴葉、見て」
「ん?」
奏斗が私の手を引いて一枚の絵の前に連れていった。
そこに描かれていたのは桜の大木だった。
美しく桜が咲き乱れている中に、まだ緑の葉が少しだけ残っている絵。
「綺麗だね…」
「桜を見るとさ、琴葉と初めて会った日を思い出すよ」
「私と初めて会った日?」
「そう。宮入りの日。
琴葉、桜の着物を着てただろ?
俺さ、あの着物を着た琴葉のこと、きっと一生忘れないと思う」