PRINCESS story
夕食はシェフを呼ぶ予定だったが、琴葉が材料があれば自分で作ると言って聞かなかったので、材料のみ用意してもらった。
手際よく野菜を切る琴葉をカウンターごしに見ていると、不思議な気分になる。
「何作ってるの?」
「カレー。手抜きでごめんね」
「いや、嬉しいよ。俺こそごめん。
誕生日なのに作らせちゃって」
「いいの。慣れてるし、好きだから。
お母さんが亡くなってから、夕食は日曜日以外私が作ってたし。
でも、まずくても文句言わないでね」
「言わないよ」
宮殿ではこんな会話したことなかった。
2人だけでいると、本当に夫婦なんだなと実感する。
俺……
今からでも、ちゃんと夫婦になれるって信じてもいいかな?
心の中で、琴葉に問い掛ける。