PRINCESS story

「あのさ…」


沙穂が死んだ時、琴葉に向かって、お前に俺の気持ちは分からない、と言ってしまったこと。

このことが、ずっと俺の心でひっかかっていた。


今さら謝っても琴葉に沙穂のことを思い出させてしまうだけかもしれないけれど、やっぱり謝りたくて、俺は話を切り出した。


「沙穂が死んだ時、俺は周りが何も見えてなかった。
琴葉のお母さんが亡くなってることも知らなくて…俺の気持ちなんて分かるわけない、って言った。
本当にごめん。
一番、俺の気持ちを分かってくれてたのは琴葉なのに…」


「奏斗……私、気にしてないから、謝らないで」



琴葉の表情は暗くて見えない。


今、琴葉はどんな顔で答えてる?

本当に気にしてない?


それとも……



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