PRINCESS story
せっかく日本に生まれたのだから、着物の着付けくらいできないと。
着物の着付けをするたび、そう言っていた母の顔が鮮明に浮かんでくる。
「琴葉…よく似合ってるよ」
着物に着替えた私に、父が言った。
「それでは、お化粧の方を」
水原さんという女の人が、手際よく私の髪をセットし、化粧もしてくれた。
「終わりました」
水原さんはそう言うと、手鏡を手渡してくれた。
「えっ……」
鏡の中の私は、いつもの私じゃないみたいだった。
それをみて実感する。
私は本当に、王子妃になるのだ、と。
三上琴葉として生きるのは、昨日が最後だったのだ、と。