PRINCESS story
「えっ?」
「ほらねー、やっぱり、困らせちゃった。気にしないで」
何事も無かったかのように淡々と荷物を詰め続ける琴葉に言う。
「理由、教えて」
「いいよ、もう」
「よくない。俺が知りたい」
すると、琴葉は下を向いて言った。
「宮殿に帰ったら、またいつもみたいに元通りになる。
昨日と今日、すごく楽しくて幸せで…
奏斗と本当の夫婦になれたみたいだった」
“なれたみたい”って…
「宮殿に戻ったって変わらないよ」
「私の中では違うの。宮殿では、あくまで王子と王子妃。形だけの夫婦だから。
それでいいんだって、分かってる。
でもね……」
少し琴葉の声が震えている。