PRINCESS story
「琴葉…」
「言いたいことは、これで全部だよ」
そう言った琴葉の目には、涙がたまっているように見える。
それでも無理に笑顔を作っている琴葉を見ていると、胸が張り裂けそうだった。
「困らせて、ごめんね。
今の、聞かなかったことにして…」
琴葉は立ち上がり部屋を出ようとした。
「待って」
自分でも無意識のうちに、琴葉の腕を掴み、呼び止めていた。
今、俺の気持ちを伝えなかったら、取り返しのつかないことになる。
そう思った。
「琴葉」
呼んでも、琴葉は俺に背を向けたまま目を合わせようとしない。
だから、俺は琴葉を後ろからそっと抱きしめた。