PRINCESS story
「お車を家の前までお回ししました。そろそろお時間です」
「…はい」
家を離れる時間が来てしまった。
「お父さん、蓮にぃ……私、行くね」
私は最高の笑顔で言った。
今日は必ず笑顔で家を出よう、と決めていたのだ。
「琴葉、体調には気を付けて。
琴葉らしく頑張ればいいから…」
「うん……ありがとう」
私は、玄関の前で立ち止まった。
今日、この玄関のドアは、ただのドアじゃない。
私にとってこのドアは、今まで一度も足を踏み入れたことの無い世界へと繋がる扉…
思い切ってその扉を私は開けた。
…たくさんのフラッシュを浴びながら、私は一歩を踏み出した。
私が、これから生きていく世界への、第一歩を…