PRINCESS story
愛無き婚礼
私は、今、婚礼の間へ移動している。
隣には、奏斗王子。
私の夫になる彼は、すらっと背が高く、王子という呼び方がとてもよく似合う。
なんとなく近付きがたい雰囲気を持つ彼だったが、それが彼の魅力なのだろうと私は感じていた。
今夜初めて出会ったそんな彼と、今から私は婚礼の儀を挙げる。
私と彼は、まだ一言しか交わしていない、言ってみれば赤の他人。
それなのに、もう婚礼の儀……
つくづく、ありえないと思う。
宮殿にいる今も、自分が王室に嫁ぐという実感が湧かず、雲の上の世界に足を踏み入れてしまったかのような気分だ。