PRINCESS story
「どうかした?」
あまりの恐怖から呆然と立ち尽くしていた私は、奏斗の言葉で我に返った。
私は、慌てて引き出しに手紙をしまった。
「なんでもない…」
「本当に?」
もし、この手紙のことも、この間襲われた時に言われた言葉も全部、奏斗に言ってしまえば楽になれるだろうか?
でも、そのことを知った奏斗が、万が一、王子の座を降りるとでも言ったら…?
色々な可能性を考えると、やっぱり奏斗には言えなかった。
心配をかけたくない。
それに、奏斗には何があっても王子の座を降りてほしくない。
「本当になんでもない」
私は無理矢理笑ってそう言った。