PRINCESS story

おそるおそる、目を開いた。



「鈴野さん!」


まず目に飛び込んできたのは、頭から血を流した鈴野さんだった。


車を止めるために、車ごとコンクリートの壁に突っ込み、割れたフロントガラスの破片で怪我をしてしまったようだ。



「鈴野さん…!」

「……姫…ご無事で何よりです」


「鈴野さん……血が…血が…」


「大丈夫です、これくらい」


「今、救急車を呼びます」


「だめです、それは……宮殿に電話を」



私は急いで携帯で宮殿へ連絡した。



死ね、と書かれた紙と封筒を鞄にしまい、鈴野さんの額の血をハンカチで拭う。


「鈴野さん…ごめんなさい…本当にごめんなさい」



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