PRINCESS story
「あれは、偽物の俺だからね…」
「偽物…?」
「そう。この世界で生きていくために、自分を偽って王子らしくしてるんだ。
今の俺が、本当の俺だよ。がっかりさせちゃった?」
「…ほっとしました」
私がそう言うと王子は少し意外そうに言った。
「ほっとした?」
「はい。さっきまでの王子は、なんか雲の上の人みたいで…
でも、こうして話してみると、少し近く感じられたんです」
「そっか……それって、いいことかな?」
「もちろん」
「そうだ」
王子が急に思い出したように言った。
「なんて、呼べばいい?」
「…姫、は嫌です。私に、その呼び方は似合わないので…」
「じゃあ、姫が嫌なら……琴葉、って呼ぶのでいい?」