PRINCESS story
「奏斗王子、琴葉姫、そろそろお車へ」
中野さんに言われ、私たちは車の待機場所へと向かった。
「昨日、ちゃんと寝れた?」
歩きながら、奏斗に聞かれる。
「うん、まあ……」
本当は、あなたの言葉が気になって眠れなかったの…
心の中でそう呟きつつも、奏斗には笑顔を向けた。
「琴葉……俺たちは人形みたいなものなんだよ」
突然、奏斗が言った。
「人形?」
「そう。人形…
遺言によって結婚させられた挙げ句、今日はこれから国民に笑顔を見せ続ける。
俺たちの意思はあってないようなもの。
嫌でも、王室の人間である以上、国民の望む姿を見せ続けないといけない」