PRINCESS story
「私は、結婚したら王室を出られるわ」
だけどね、と雅さんは続ける。
「奏斗は一生、窮屈で自由の無いこの世界で生きるしかないの。
奏斗にあるのは、王になるっていう決められた未来だから」
今までそんな風に考えたことなかった…
奏斗に与えられた未来は“王”になるという未来。
奏斗には夢を見る自由も、自分の未来を決める自由も、何もない。
これまでも、これからもずっと……
「だから、琴葉ちゃん…お願いがあるの」
「私に…?」
雅さんは頷いた。
「奏斗は、自分の置かれた立場に文句を言ったりしない。
でもその代わりに、家族に自分の本心を見せることもほとんどない」
雅さんが悲しそうに言う。