真っ赤なチェリーの復讐








夜がすっかり深くなった頃、最後の客が帰っていった。





どっと疲れて、溜め息を零す。





しかし、最後の客が帰っても、蓮見組の若頭だというオッサンはいつまでもカウンター席にいた。




隣に座るリンダママと、元々知り合いだったらしい梨子と、三人で何やら会話に花を咲かせていた。






「サクラちゃん。今日はありがとう。
先にお風呂入って、休んじゃっていいわよぉ。」


「はぁ……。」




リンダママの言葉に返事をして梨子を見ると、梨子は唇だけを動かして、

「お先に、どうぞ。」

と言った。






……そうだよな。



梨子にとっては、リンダママも蓮見組のオッサンも、昔世話になった大切な人たち。



久しぶりの再会、積もる話の一つや二つあって当然だ。







「……じゃあ、お言葉に甘えて。お疲れさまでした。」





一握りの寂しさを抱えて、俺は二階へと続く階段を上った。






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