真っ赤なチェリーの復讐
店の中に入ったところまではよかった。
客は誰もいねぇし………けど、店員の姿もねぇ……。
バックルームにいるとか?
客来たら、とっとと出て来いよ……って、俺、客じゃなくて強盗か…。
夜の闇に包まれた真っ暗な外と対照的に、バカらしいほど明るい店内。
……まさか、店員呼ぶのか?
……俺、強盗だぞ…。
何か、それ……ダサすぎね?
でも、迷ってるヒマはない。
仕方なく、俺は声を上げた。
「…あのー!」
レジのカウンターの奥……多分、バックルームから足音がして、若い女の声が響く。
「いらっしゃいませー!」
俺は俯いた。
キャップとマスクで顔を隠していても、細心の注意を払うべきだ。
レジの前に突っ立っている俺に、店員は言った。
「いらっしゃいませ。」
………このタイミングしかねぇよな。
俺は、ボストンバックから包丁を取り出した。