それでもおまえらは、俺を合コンに誘うのか?
「あぁぢー……」
暦の上では初夏なのであろうが、今のご時世七月の暑さはもはや初夏の暑さではない。
部活で散々疲れて帰ってきた和俊は、長椅子に変死体のような不自然な体勢で腰掛け、トランクスにランニングシャツというラフという域を遥かに超えるいで立ちで団扇をパタパタと扇いでいる。
エアコンプレッサ全盛のこのご時世に、団扇の出る幕がやって来るところに、剣持家の経済力の低さが痛いほどよく窺い知れるというものだろう。
突然もう我慢できんといった体で飛び跳ねるように椅子から起き上がった和俊は、傍らに置いてあったスポーツバッグをまさぐり、やがてエアーサロンパスを取り出した。
そしてそれを右手の指先から肩にかけて丹念に吹き付けていく。
「あー、涼むー。やっぱし暑ぃ時ゃあエアーサロンパスに限るわい」
使う動機は明らかに間違っているのだが、部活のメニューをこなした後、さらに家で行っている素振りやシャドーピッチングなどの自主練習により筋肉は極限まで疲れ果てているのだから、使い方としてはあながち間違っているとも言い切れない。