それでもおまえらは、俺を合コンに誘うのか?
エアーサロンパスは医薬品である。だからこそ、あれほどの薬品臭を発するのだ。
そのため価格のほうもただのコールドスプレーと比べると、若干高めになっている。
剣持家の経済力を知り尽くす舞姫は、そのことを気にかけているのだった。
「ただ涼みたいだけじゃなぁわい! 疲れとるけぇエアーサロンパスなんじゃろうが!」
「じゃあ普通に使えや! なんでわざわざ体中にぶっかける必要があるんねぇ! 一回使うただけで半分くらい無ぁなっとんじゃろうがぁや!」
「お金無いんじゃけえ、無駄なこたぁせんといてもらわんと……。ほんまにギリギリなんじゃけえ……」
「ただいまぁ……」
論戦の矛先が金の話に変わった瞬間に、利明が今にも倒れてしまいそうなほど憔悴した顔を貼付けて帰ってきた。
その場にいた全員が利明の放つ只事ではないオーラに気付く。
「オヤジ……、どしたんなぁ……?」
家族を代表して、和俊が問い掛ける。それに合わせるように、舞姫と乙姫は激しく首を縦に振った。
「みんなすまん……。工場……、……潰れてしもうた……」