奥に眠る物語
「マジですよ 私もびっくりしちゃった」

そう言いながらオーナーが入れてくれたコーヒーを飲む。

苦さに思わずしかめっ面になりながら、私はカップを置いてミルクや砂糖を手元に引き寄せた。

「その客、実は味覚オンチなんじゃねぇの?」

「・・いや、そこまで言う必要無くないですかね?」

ポチャンッと音をたてながら角砂糖がコーヒーの中に入った。

3、4個ほど入れて、ミルクもたっぷりいれる。

それをみていたオーナーは頬杖をつきながら溜め息をついた。

「お前さんねぇ、入れ過ぎだ せっかくこの俺が入れてやったコーヒーを台無しにしやがって」

「そんなことないですよ このほうが味が引き立つんですー」

私はくるくるとマドラーで混ぜて、一口飲む。

うん。おいしい。

まったくオーナーは何も分かってないんだから、と心の中で文句を言いつつ、すました顔でコーヒーを飲む。

「しかしまぁ・・・ 一回その客の顔を見てみたいわ。 んで、俺の自慢のコーヒーを飲ませる!」

「今度は川上さんがいる時に来るといいですね」

フフッと笑いながらコーヒーを飲み干した。

下に砂糖が溜まっていたのか、口の中がザラザラする。

「川上さん おかわり」

「おかわりは別料金になりますが?」

「えー、意地悪」

頬を膨らましながら言う私を笑いながら、コーヒーを入れてくれるオーナーはいつになく機嫌が良かった。


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